文化祭編~Ⅲ.当日・夜の部~

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「兄ちゃん!」  清香が口から白菜を出しながら立ち上がった。 「行儀悪いぞ!」 と兄に怒られる。 「何しに来たのよ! このちゃんこは私のだよ!」 「清香、違う。私たちの、ね」  あかりがすぐさま訂正した。 「ぎゃあぎゃあ騒ぐな、わが妹よ」  兄は悠々と豆腐に息を吹きかけて冷まし、パクリと食べた。 「さやの鍋には手出してないだろ。俺はこっちで食べてるからさ」 「その代わり、こっちが減るだろ!」 と小崎が言った。 「そこの兄妹そろっちゃまずいんだって!」 「いちいち騒がないの!」  小崎の後ろから清香の母が現れた。  両手に野菜(大盛り)、肉類(大盛り)の皿を持って現れる。 「お代わりはちゃんと用意してるから、静かに食べなさい!」 「待って、何で俺が怒られてるの……」  両手で顔を覆ってうなだれる小崎であった。 「まあ、おかわりがあるならいいよ」  清香は着席すると、さっそく肉とつくねを次々に投下して行った。 「でも兄ちゃん、課題まだ終わってないんじゃないの?」 「そうだな」  兄は平然としている。 「でも明日があるから余裕だぞ」  そう言う学生に限って、結局やらないのだ。 「しかし、そこにちゃんこ鍋があったら?」 「食べる」 「だろ?」 「そーこに、」  突然、兄が歌いだした。 「ちゃんこ鍋が、」  清香が続く。 「あーる限り~♪」  最後は、兄弟仲良くそろって鍋への想いを歌い上げたのだった。 「スターか」 「太陽じゃないのか」 「いい具合に昔のネタ使うの、やめてくんない」  次々にツッコミが飛んでくるのも、毎度おなじみである。  しかし、これらをノンストップで食べながら話しているのだから、なかなかすごいものだ。
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