文化祭編~Ⅲ.当日・夜の部~

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・22:05『温かい夜には、優しいエンドロールを』 「ごちそうさま!」 「ありがとうございました!」 「お疲れ!」  めしやの表。  夏目家に挨拶をして、高校生たちは外に出る。  1人、自転車通学のあかりが、側に停めておいた自転車を取りに行っている。  夜はかなり涼しくなってきたが、鍋のおかげでみんなポカポカである。  清香が外まで出てきて、見送りをする。  いや、訂正しよう。  自宅まで歩いて数歩の小崎もまた、見送る側だった。 「あれ、お前帰んないの?」 と飯田が言った。 「帰るけど、まだ帰んない」 「え? まさか泊まるの?」  飯田の後ろから、宇野が顔を出した。 「やだー! お泊り?」  女子よろしくはやし立てる。 「おい、いつの間に?」  そうなると、もちろん飯田も乗ってくる。 「ち、違う! そんなわけねえだろバカ!」  小崎が真っ赤になって叫んだ。  バッと飛び出して、友人に蹴りを入れる。  2人がきゃーきゃー言いながら逃げるのを、全力で追いかけた。 「外で騒ぐんじゃない!」  環菜が一喝した。 「今何時だと思ってんの!」 「出た、お母さん」 と悠希が言った。  お母さんに怒られた男3兄弟は、大人しく戻ってきた。 「片付け手伝わせられるから……帰れねえだけだし」  しかし、小崎だけは1人でぶつぶつ文句を言っていたのであった。 「じゃあ、清香と小崎はまた来週」 と環菜は言った。  みんな次々に、別れの挨拶を投げる。 「うん、みんなも気をつけて帰ってね」  清香は笑顔で手を振った。 「私はこの後ケーキ食べる」 「その情報はいるの……?」  悠希が首をかしげた。 「じゃあ、行こうか」  環菜が駅の方向を見た。 「あかりは?」 「駅まで一緒に行く」 「じゃあ、みんなで帰ろう」 「バイバイ」 「バイバイ」 「じゃあね」  環菜、璃子、悠希、あかり、飯田、宇野の6名は、ゆっくり駅に向かって歩き出した。  清香と小崎が、道の真ん中まで出て来て、見送っている。
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