文化祭編~Ⅲ.当日・夜の部~

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「おお、」  悠希がパチパチ手を叩いて喜んでいる。 「どうしたの?」  隣のあかりが尋ねた。 「今、一瞬息が白かった」 「私たち、今あったかいからね」 と璃子が言った。 「温度差だ」 「鍋たくさん食べたからなあ、腹いっぱいだ」  宇野が満足げに言う。 「帰ったら、シュークリーム食べよう」 「あんたもか!」  璃子が驚いて言った。 「甘いもんは別腹だぜ」  宇野がにんまり笑った。 「私は眠くて仕方ないよ」  悠希があくびまじりに笑った。 「今日起きたの、5時半だよ」  そう言って、眠そうに目をこする。 「帰ったら、風呂入ってサッサと寝ちゃいな」 と環菜が声をかけた。 「そうする、そうする」  とろんとした目で、悠希が何度もうなずいた。 「――生島、」  スッと飯田が寄ってきた。 「この後は?」  ささやき声で尋ねた。  それから、手でおちょこの形を作ると、くいっと小さく動かしてみせる。 「ひひひ、」 と環菜は笑った。 「そりゃあ、うちの冷蔵庫はいつでも準備OKですよ」 「じゃ、決まりだな」 「うん。――璃子!」  少し前を、あかりと並んで歩く璃子に声をかけた。 「何?」  璃子が振り向く。  あかりもつられてこちらを見る。 「あのさ、えっと――やっぱ何でもないや!」 「何なのよ」  あんなにみんなに注目されていて、この後二次会ですとは言いづらい。 「どうしたの、環菜」 とあかりが言った。 「知らん、いつものことだし」  璃子が肩をすくめた。  道が曲がり角に差し掛かった。 「あっ」  最後尾の環菜が声を上げたものだから、全員つられて振り向いた。 「あ……」  それぞれ、声を漏らす。  小さくなってしまった清香と小崎が、まだ立っていたのだった。
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