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・3年4組卒業アルバム委員
環菜は腕組みをして自席に座っていた。
けわしい表情で、じっと机の上を見つめている。
「どうした」
と璃子が声をかける。
「いや……あまりに早すぎない? まだ1か月以上ありますよ?」
「何の話?」
璃子、首をかしげる。
「だってさ、いくら11月が特にイベントないとは言え、11月だって秋らしさとかさ、そういうイメージあるはずなのにさ。それじゃ、あんまりというか、ちょっと急ぎ過ぎな気がするんだよね」
「だから何の話」
「一体、11月の何をそんなに懸念しているのやら」
と清香が言った。
クリスマス仕様のパッケージのロールケーキを食べている。
「それだ!」
いきなり環菜が立ち上がったので、悠希がひっくり返った。
「あ、悠希、ごめん」
「人がひっくり返るほどの勢いって、相当だよ」
悠希が膝の痛みに、顔をしかめながら言った……。
「それよ、それ」
環菜は清香のロールケーキを指さした。
「あげないよ」
清香は一気に半分、口の中に押し込んだ。
「すご」
と璃子が言う。
「普通の人だったら、窒息死するよ」
「ほしいとはひとことも言ってない。――そうじゃなくて、ハロウィンからクリスマスへの移行が早すぎないかって、私は言いたかったの」
「それだけ言うのに、ずいぶん引っ張ったねえ」
「そのネタさ、ハロウィンのときも言ってなかったっけ」
と悠希が言った。
「この人すぐ転用するんだよ」
璃子が環菜を指さして、しかめっ面をした。
「転用……?」
あまり、高校生の使う言葉ではない。
やや空気が変になったのを察して、璃子は派手に咳ばらいをしたのだった……。
チャイムが鳴った。
「あ、和田ちゃん来た」
朝のHRの時間である。
環菜たちは散り散りになった。
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