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「えー、じゃあ、今日の連絡事項」
和田が淡々とHRを進めて行く。
「――何か今日、和田ちゃん眠そうじゃない?」
環菜が近くの宇野にこそこそ言った。
確かに、いつもに増して髪はボサボサ、目もとろん、としている。
「寝れてないんじゃないの」
と宇野は返した。
「なるほど」
環菜はうなずいた。
「受験生のクラスを受け持つってのも大変なんだろうね」
まるで他人事のようである。
「えーと、最後」
和田が相変わらずもにゃもにゃ話す。
「まあ今まさに受験やら就職やら、みんないろいろ大変だろうとは思うけど、その先のことも考えなければならないわけで」
「……?」
「さあ、何でしょう」
突然、早押しクイズが始まった。
「クリスマス!」
「それはもうすぐだな」
生徒たちが、次々に自席の机を叩いて回答していく。
「ケンタッキー!」
「正月!」
「おもち!」
「バレンタイン!」
「ゴディバ!」
「越後製菓!」
「俺の誕生日!」
「ミスド100円セール!」
早押しクイズと言うよりは、大喜利合戦のような状態になってしまった。
待て待て、と和田が止める。
「何でそんな個人的なことをHRで話すんだよ。――てか誰だよ、越後製菓って言ったやつ」
「もうそろそろ、そんな季節ですよ」
環菜が痛む手のひらを振りながら、ニヤニヤ笑っている。
「お前か」
やはり、という表情の和田であった……。
「でも、買うのは大体サトウの切り餅だけどね」
「知らないよ」
和田はえふん、と咳ばらいをした。
「受験が終わったら、卒業でしょ」
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