11月2週目

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 生徒たちがシン、と静まった。  そして――。 「先生、それは言っちゃだめだよ!」 「わかってたけど、それは言わないように我慢してたのに!」 「もうすでに泣きそう」 「先生はどうせさ、卒業式なんて毎年の行事だって思ってるんだろうけどさ!」  結局、わあわあ騒がしくなる。 「うるさいっての!」  和田はバンバン、と教壇を叩いた。 「寂しいのはわかるけど、仕方ないの。――頼むから話を進めさせて」  全く、このクラスの担任になってから喉の調子がよろしくない。  先日、とうとう龍角散のど飴に手を出してしまった。  再び静かになったところで、和田は話を進めた。 「卒業に向けて、――アルバム委員を決めてもらいます」  生徒たちの頭に『?』マークが浮かんだ。 「アルバム委員? 何それ」 「卒業アルバムを中心になって制作するの」  和田は説明をした。 「もちろん、製本とかは業者に頼むよ。クラスのページとか中身とか、そういうのを考える」 「ほう」 「3人か4人くらいかな。5人じゃちょっと多いし、2人じゃ大変かなあ」  さあどうする、誰がやるんだとクラスが少しざわつき始めた。 「正直なところを言うと、受験が終わった人の方がいいとは思う。まあでも、やりたい人がやればいいよ」 「どっちなの」  誰かにツッコまれてしまった。 「――先生、」  ひょい、と手が上がった。 「俺、やる」 「飯田、」  璃子がぽつり、と声をもらした。 「まずは、飯田ね」  和田が、手元でメモを取る。 「あともう1人か2人くらいほしいな」 「――ねえ、宇野あんたやれば?」  環菜が宇野の椅子をつついた。 「え? 俺?」 「あんた、器用だからこういうの向いてるんじゃない?」 「いやあ、でも俺は……」  宇野が困った表情になる。 「いいかなあ」 「いいかなって何よ」 「何だ、手伝ってくんないの」  飯田が頬杖をついて、ふくれた。
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