11月2週目

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 飯田以外の委員が決まらない。 「じゃあ、みんな少し考えといて」  和田が時間を確認しながら言った。 「明日、明後日で決めたいかなあ。今ここじゃなくて、後でやりたいと思ったら俺に言ってもらえればいいし」  クラスに少しほっとしたような空気が流れた。 「――あ、あの!」  いきなり大声が聞こえて、全員がビクッとした。  和田は危うく教壇から落ちるところだった。  悠希が立っていた。 「あの、あた、あた、私もやります」  何故かうろたえている。 「落ち着いて、悠希」  璃子が声をかけた。 「あと、立つ必要はないと思う」 「そ、そうか、そうだね」  すす、と着席した。 「いいの? 里見」 と和田が聞いた。 「はい。あの、私あんまセンスとかよくないけど、何か他のことで頑張れたら」 「別に、センスがどうとか、そういうことは関係ないよ」  和田は穏やかに言うと、メモを取った。 「じゃあ、あと1人か2人」 「――先生、」  ひょいっと手が上がった。 「おっ、増山」 「私もやる」 「やるなあ、増山」  小崎がぽかんと、口を開けて言った。 「俺は文化祭委員で、もう充分だ」 「そりゃ、あかりはあんたと違って頼れるからね」  少し離れたところから、清香の声が飛んできた。  小崎の口角がヒクッと上がる。 「何だよ、そういうお前はやる気ないのか」 「私は今、おもちのことで頭いっぱいだから」 「知らねえよ、もちはまだ早いだろ」 「早くないもん。何なら年中食べたっていいし」 「勝手にしろ」 「――はいはい」  和田がまあまあ、と手を振って止めた。 「せめて休み時間にやってちょうだい。――じゃあ、飯田と里見と増山の3人ね。これで――」 「先生!」  再び大声が教室に響いて、とうとう和田は教壇から足を踏み外してしまった。 「びっくりした……宇野?」 「やっぱり、俺もやる!」  宇野がピン、と片手を挙げて宣言した。 「何、あんたさっきやらないって言ったじゃん」  環菜が横からちゃちゃを入れた。 「気が変わったんだよ」 「気が変わるの早すぎでしょ」  環菜はやれやれと肩をすくめた。 「この1ページに一体何があったのさ」 →→NEXT: 28歳の考えることとは
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