11月2週目

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「――飯田、ねえ」  環菜は席に座っている飯田に声をかけた。 「何」  スマホから顔を上げる。 「宇野は?」 「知らん。連絡も来ない」 「通常営業だね」  横で悠希が言った。 「ふうん……」  環菜の頭に、ちょっとしたいたずら心が浮かんだ。  1人、にやあと笑う。 「うわあ、ちょっとやめてくんない」  璃子が顔をしかめた。 「それか、せめて私の周り半径2m以内に入らないでほしい」 「今日の璃子、いつにも増してきつくない?」 と環菜は言った。 「半径2mって結構広いけど。教室から出てけって言ってる?」 「いや、今の環菜、なかなか危なかったよ」 と悠希が言った。 「え、そんな?」 「仕方ない、この主人公は学習しないから」  璃子がため息をついた。 「それで? 何を考えたわけ?」  環菜は友人たちを招くと、こそこそ話をした。 「いける? それ」  悠希が目を丸くして言った。 「怒られても知らねえぞ、俺は」 と言いつつ、にやけているのは飯田である。 「だって、足元どうすんの」  以外にも、真面目な反応をしたのは璃子であった。 「ブランケットで隠す」 「でも、つま先まで隠すってわけにいかないでしょ」 「とりあえず、あいつの上履き持ってくるか」  飯田が提案した。 「それだ! よし、あんた持ってきて」  環菜は飯田の肩をパン、と叩いた。 「俺?」 「当たり前でしょ!」 「どこがどう、当たり前なんだよ」 「いいからほら、早く!」  飯田は合点がいかないまま、教室を飛び出した。 「よし、時間がないぞ、急ごう!」 と環菜は言った。  環菜、璃子、悠希の3人は、宇野の席に集まった。
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