11月2週目

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 まずは、宇野の机から教科書やら本類を引っ張り出し、椅子に積み重ねていく。  足りなければ、環菜の席からも少し持ってきて積む。 「上の方は、体育着とかがいいかな」 「どっちかっていうと、腰あたりじゃない?」 「背中はブランケット丸めたのがいいよ」  璃子のブランケットを丸めて、机の上に置く。 「でも、頭のところにも、やっぱり隠す何かがいるね」  宇野の体育着袋を勝手に出して、ブランケットの前あたりに置く。 「で、私のパーカーをかぶせる、と」  環菜が自分のパーカーを脱ぐと、その上にかぶせた。 「いい感じ!」  悠希が手をたたいて喜んだ。 「ちゃんと、突っ伏してるようにしておかなきゃ」  璃子が、袖を机の上で曲げる。 「宇野はパーカー着ないけどね」 と環菜は言った。 「まあ、いいでしょう。これで頭もいい感じに隠れる」  横を、結衣が通った。 「何してるの」  目を丸くしている。 「へへへ」 と環菜は笑った。 「?」 「へへへ」 「いや、へへへじゃなくて、説明してあげなよ」  璃子が環菜をつついた。 「宇野が毎度遅刻してくるから、あるもので宇野のダミー人形をつくってみようって」 「先生、ごまかせる?」  結衣は不安そうに言った。 「結構いけるんじゃないかと」 「うーん……」  結衣はなおも、いぶかしげな表情だ。 「今、手元に小道具のウィッグあるけど、使う?」 と結衣は言った……。 「――おい、」  飯田が戻ってきた。息が絶え絶えである。 「持って、きたぞ……」 「お、ご苦労!」  環菜がサッと片手を挙げた。 「疲れた!」  飯田は宇野の机に寄りかかった。 「ちょっと、崩さないように気をつけてよ」 と環菜が文句を言った。 「え? あ、これ!」 「どうだい、なかなかのクオリティでは?」 「なるほどね」  飯田はニヤニヤしながら、宇野人形を見ていたが――。 「そうだ、俺のブレザーも着せてみよう」  ばっと脱いで、パーカーの上にかぶせる。 「もっと、それっぽくなった!」 と悠希が言った。 「走って暑くなったし、ちょうどいいや」  飯田はすっきりした顔で言った。
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