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「上はできたけど、下はどうするの」
と璃子が言った。
「ブランケットで隠したって、ヒラヒラしちゃうんじゃ、まるで幽霊じゃない」
「宇野を殺すわけにはいかないしなあ」
飯田がしれっとひどいことを言っている。
「あ、そうだ」
悠希がはっとした。
「ねえ、傘は?」
「傘?」
「うん、教室の前に、ビニール傘あるでしょ。あれを2本椅子に立てかけて、上履きにはかせるの。で、ブランケットをかければいいんじゃない?」
「悠希、頭いい」
環菜が拍手をした。
「ビニール傘、ねえ……」
1人、飯田が考えている。
「なあ、折りたたみ傘持ってないか?」
「折りたたみ?」
と環菜が言った。
「あるよ、1本なら」
「2本も3本も持ってたらおかしいでしょ」
璃子が自分の席に傘を取りに行きながら言った。
「何で折りたたみ?」
悠希が尋ねた。
「たぶん、ビニール傘じゃ、長すぎて不自然な気がする」
と飯田は言った。
「あいつ、そんなに足長くない」
環菜と悠希が吹きだした。
「ひ、ひどいな」
そう言いつつ、自分たちもケラケラ笑っているのだから、同じようなものである。
私物を総動員した結果、見事な宇野人形が完成した。
パーカーの上に上着を着て、室内なのになぜかマフラーと手袋までしている。
フードからは結衣提供の髪が見えていた。一応は男性用のそれである。
「これは想像以上!」
環菜は両手をあげて喜んだ。
「宇野に送ってあげよう」
悠希がさっそく写真を撮っている。
「――環菜、環菜!」
教室の入り口あたりで、結衣が呼んでいる。
声を出さずに、口パクだけで伝えてくる。
「先生、きた」
「うわ、まずい」
本鈴がなった。急いで自席に戻る。
「おい、急げ」
飯田が、まだ写真を撮っている悠希をうながす。
「見つかったら意味ないんだから」
「ちょっと待って――OK!」
悠希もその場を離れる。
「あっ」
環菜はふと思いついた。
急いでロッカーに走り、また宇野の席に戻る。ちょちょっと細工をして、自席につく。
間一髪、逢坂菜月が教室に入ってきた。
→→NEXT:宇野大仏、日本史Bを受ける
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