11月2週目

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「あはははっ!」  宇野が豪快に笑い転げた。  人形ではなく、遅刻してきた本体である。 「何笑ってんの」  環菜がじろり、と宇野をにらんだ。 「あんたが毎度遅刻してくるからじゃない」 「でも、俺がそうやれって言ったわけじゃないもん。そっちが勝手に遊んだんじゃん」  環菜のこぶしが宇野の頭にぐりぐりとめりこんだ……。 「痛え……こめかみはだめだろ、こめかみは」 「俺は同情しないぞ」 と飯田が言った。――ニタニタ笑いながら。 「面白がってんじゃねえぞ」  宇野が涙目で飯田をにらむ。 「そりゃ、面白かったさ。――これが」  飯田はスマホを振ってみせた。大仏の写真が写っている。 「それにしても、宇野、最近遅刻多すぎない?」  悠希が心配そうな顔で尋ねた。 「うーん、まあ……」  宇野はぐしゃぐしゃと頭をかいた。 「あんた、今週全部遅刻してる」  環菜が横目で宇野を見て言った。 「そう?」  どうやら、全くもって自覚がないらしい。 「だろうな」  と小崎が言った。 「じゃなかったら普通、もうちょっと遅れないように頑張るもんだと思うけど」 「でも、聞いてよ!」  突然、宇野が得意げに話し出した。 「まあ、どうせレベルの低い話だろうけど」 と環菜が言った。 「暇だし、聞いてやるか」 「だな」 「俺、今日はちゃんと朝起きたんだよ」  宇野はわくわくしながら話した。――周囲との温度差が激しい。 「で、家も時間通りに出たんだよ」 「はいはい」 と小崎が適当に相槌をうつ。  その隣では、清香が黙々と焼きそばパンを食べている。
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