11月2週目

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「でさ、駅ついたらさ、定期券がねえんだよ」 「忘れたの」 と悠希が言った。 「うん。で、走って家に取りに帰るじゃん。見つからないじゃん」 「だから部屋は片付けておけって、いつも言ってるだろ」 と飯田が言った。 「お前、お母さんかよ」 と小崎が言った。 「親にも同じこと言われた」  宇野が頭をかいた。 「結局、定期はかばんに入ってたんだよね」 「何だそりゃ」 「その時点で20分遅れちゃってたから、走って駅に着いた後に、電車の時間を調べようと思ったんだよ」 「ほう。授業に間に合うかどうかを、ね?」 「そうそう。そしたら、俺、スマホも忘れてたことに気づいて」 「本当に忘れたの、それは」 「本当に忘れた」  宇野は堂々と(?)言った。 「もう1度家に帰ったら、部屋にあったんだよ」 「何で、定期を探してるときに気づかないんだか」 「合わせて、乗るはずだった電車から40分くらい遅れたのかな」  宇野は腕を組んで言った。すぐにその腕をパッと広げる。 「なのに、今日、俺、10分しか遅刻しなかった! すごくない?」 「……」  清香が次の菓子パンの袋をバリッと開ける音がした。 「宇野の遅刻癖が治らないの、何でかわかったような気がする」  悠希が頭を抱えて言った。 「あんなこと言ってる時点で、一生治らないな」  小崎がやれやれと、首を振った。 「もう、だめだこの子。お母さん心配」  環菜が顔をおおった。 「誰か助けてあげて」 「無理」 と飯田が言った。 「うん! これ、初めて食べたけど美味しいね。また、買おう」 と清香が言った……。 →→NEXT: 体調不良にはご注意
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