11月2週目

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「初めて会ったとき、もし私たちに何かあったら、保護者として連絡が行くのはノブモトだって言ってたよね」 「言いましたねえ」 「半年以上たって、初めて保護者役になるとは」 「そちらが頼ってくれなかったんじゃないですか」 「だから、必要なかったんだって。それに、」  そこまで言って、環菜はいったん言葉を切った。 「それに……あの時は、まだいろいろ余裕がなかったんだ」 「余裕、ですか」 「当たり前じゃん、いきなり体と周りの環境だけ高校生に戻されてさ。あんたを警察に突き出さなかっただけ、私たちに感謝してほしいくらいだよ」 「いえ、まあ……確かにその件につきましては……」 と言いかけて、ノブモトは『ん?』と首を傾げた。 「いや、お2人とも最初、警察に行こうとしてましたよね」 「でも、結局行かなかったじゃん」  環菜がぴしゃりと黙らせた。  それから、ほっと息をはきだす。 「あれから半年経ってね、いろんなこと思ったり考えたりしたよ」 「そうですか」  単調な返事だ。 「楽しい、ですか?」 「楽しい、よ」 「なのに、まだ28歳に戻ろうと?」  環菜はじろり、とノブモトを横目で見た。 「あんた、二言目にはそれだよね。もう少し他にないの?」 「でも、私の狙いはこれしかありませんから」  環菜は、肩をすくめた。 「それさ……何歳くらいを想定しているの」  ノブモトが、視線だけ環菜に返した。  その目元は、知っている彼のそれより、しわが多い。  髪も、半分近くが白かった。 「そうですね……40後半、といったところでしょうか」 「今日だけ、わざと年取った姿になってるの」 「そうですよ」  普段のノブモトは、環菜からすると30半ばくらいに見える。 「何か……違和感あるんだが、ないんだか」  環菜はしげしげとノブモトを眺めて言った。 「それは、どういう意味ですか」  ノブモトが顔をしかめて、身を引く。 「見慣れてないから、変な感じはするけど、そもそもあんた若々しい感じでもないし、これはこれでって気もする」 「ふむ」  ノブモトは小さくうなずいた。 「あれ今、さりげなく失礼なこと言いませんでしたか……?」  環菜は何も答えず、正面に向き直った。 「あ……無視……」  ノブモトが小さく言ったが、環菜には効かない。 「姿見は、自由に変えられるんだね」  また、話を変える。 「そうですね」 とノブモトが答えた。 「あの見た目のままじゃ、生島さんと親子はいくらなんでも無理があるでしょう?」 「確かに」 「これなら、どこからどう見ても親子に見えますよ」  ただし、『黙っていれば』の条件付きである。  会話が明らかに親子のそれではない。
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