10月1週目

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「――あいつ、どうしたの」  飯田がこそこそ璃子にたずねた。 「知らないよ」  璃子は面倒くさそうに肩をすくめてみせた。 「誰か別の人が乗り移ってるんでしょ」 「作者?」 「そのへんじゃない?」   「ちょっと待てよ」  環菜は1人でハッとした顔になった。 「半年の話を1年かけて連載したってことは、後半折り返しも1年かかるってこと?」 「いや、あのさ生島」  和田はチラッと璃子を見た。    璃子が両腕をクロスさせて、首を横に振る。 『この人はもうだめです』の合図だ。    和田はげふん、と咳ばらいをした。 「えー、HRはこれで終わり。後ろの主人公は――誰か頼む」 「え、先生?」  環菜がパチパチと瞬きをした。    生徒たちが、ガタガタと音を立てて椅子から立ち上がり、解散する。   「――環菜、」  1人取り残されてポカンとしている環菜の肩を、ポンと軽く叩いたのは悠希だった。 「次、教室移動だよ。早く行こう」 「あ……はい」  あまりにマヌケな環菜の表情に、悠希は思わず吹きだした。 「ねえ環菜、」 と悠希は言った。 「別に季節がずれたっていいじゃない。また1年かけたって」 「ま、まあ……何となくツッコみたくなっちゃって」 「そもそも、後から読み始めたら、季節感合わせててもずれちゃうじゃん」 「あ、そうか」  環菜がポカンとした。 「そうか」  続けて、ケラケラ笑う。 「そうだね、確かにそうだ!」     「……」  移動するため自分の荷物をまとめながら、璃子は環菜の方を見やった。 「ふう、」  自然とため息が出てしまう。 「……騒がしい主人公だよ、全く」 →→NEXT:ハリセンと僕らの方針
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