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3人は教室を出て、廊下を歩き、階段に入って踊り場で足を止めた。
「……それで?」
環菜は尋ねて――あたりを確認した。
この3人だけ、ということはつまり、あまり現役高校生に聞かれるべきではない話、というわけだ。
「下はいないぞ、大丈夫だ」
と飯田が言った。
壁を背に立つ璃子の前に、環菜と飯田が立っている。
一見すると、小柄な璃子を2人で見下ろしているものだから、絵面としては怪しい雰囲気にも見える。
璃子は、環菜、飯田の順に見た。それからいったん視線を外す。
「……璃子、」
「――やっぱり、私たちが何とかしようか」
ふいに、璃子が口を開いた。
「環菜も飯田も、友達が辛そうにしているのを見るのが、嫌なんでしょ。何とかしてあげたいと思ってるんでしょ」
環菜と飯田が、小さくうなずく。
「素直じゃないのは、清香も小崎も一緒だよ。2人とも、――まあ恋愛感情かどうかは置いておいても、お互いのこと好きなくせに」
璃子は息を吸った。
「私も同じだよ。大事な友達のために、私ができることなら何でもしたい」
「えっと、それは私たちから仲直りするように、けしかけるってこと?」
と環菜が言った。
「まあ、簡単に言えば、そうね」
「でも、それってさ――」
「待って」
璃子は環菜をさえぎった。
「わかってる。やりすぎだってことは」
自らに言い聞かせるように、言葉を続ける。
「大人の私たちが間に立つなんて、本来ならあり得ないこと」
「……」
「でもさ、それを言ったら、私たちの今のこの状況だって、本当はあり得ないでしょ。でも、実際に起きてるじゃない」
「ん……」
「私は、28年生きてきて思ったことや考えたことを、清香に伝えたいよ。それで、少しでも清香と小崎が救われる可能性があるんなら」
璃子は1歩、環菜につめよった。
「私たちは過去に戻ったんじゃない、今を生きてるんだ。10代に戻ったんじゃない、28歳の私が、10代になったんだ」
「……」
璃子の目が、まっすぐ環菜の目を射抜く。
「環菜、――あんたが私にそう言ったんじゃない」
「……」
飯田が、横の環菜をチラッと見る。
「だったら、28歳の私たちができることをやろうよ」
「……」
「これも、環菜が言ったんだよ」
環菜は、璃子から目を離せぬまま、ごくっとのどをならした。
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