10月1週目

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 3人は教室を出て、廊下を歩き、階段に入って踊り場で足を止めた。 「……それで?」  環菜は尋ねて――あたりを確認した。  この3人だけ、ということはつまり、あまり現役高校生に聞かれるべきではない話、というわけだ。 「下はいないぞ、大丈夫だ」 と飯田が言った。  壁を背に立つ璃子の前に、環菜と飯田が立っている。  一見すると、小柄な璃子を2人で見下ろしているものだから、絵面としては怪しい雰囲気にも見える。  璃子は、環菜、飯田の順に見た。それからいったん視線を外す。 「……璃子、」 「――やっぱり、私たちが何とかしようか」  ふいに、璃子が口を開いた。 「環菜も飯田も、友達が辛そうにしているのを見るのが、嫌なんでしょ。何とかしてあげたいと思ってるんでしょ」  環菜と飯田が、小さくうなずく。 「素直じゃないのは、清香も小崎も一緒だよ。2人とも、――まあ恋愛感情かどうかは置いておいても、お互いのこと好きなくせに」  璃子は息を吸った。 「私も同じだよ。大事な友達のために、私ができることなら何でもしたい」 「えっと、それは私たちから仲直りするように、けしかけるってこと?」 と環菜が言った。 「まあ、簡単に言えば、そうね」 「でも、それってさ――」 「待って」  璃子は環菜をさえぎった。 「わかってる。やりすぎだってことは」  自らに言い聞かせるように、言葉を続ける。 「大人の私たちが間に立つなんて、本来ならあり得ないこと」 「……」 「でもさ、それを言ったら、私たちの今のこの状況だって、本当はあり得ないでしょ。でも、実際に起きてるじゃない」 「ん……」 「私は、28年生きてきて思ったことや考えたことを、清香に伝えたいよ。それで、少しでも清香と小崎が救われる可能性があるんなら」  璃子は1歩、環菜につめよった。 「私たちは過去に戻ったんじゃない、今を生きてるんだ。10代に戻ったんじゃない、28歳の私が、10代になったんだ」 「……」  璃子の目が、まっすぐ環菜の目を射抜く。 「環菜、――あんたが私にそう言ったんじゃない」 「……」  飯田が、横の環菜をチラッと見る。 「だったら、28歳の私たちができることをやろうよ」 「……」 「これも、環菜が言ったんだよ」  環菜は、璃子から目を離せぬまま、ごくっとのどをならした。
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