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「……環菜?」
急に黙りこくってしまった環菜に、璃子が声をかけた。
環菜は、天井を仰いだ。
――でもさ、ノブモト。
あんたのわけわかんない実験とやらに、私ら親切に付き合ってやってんだ。
中身は28歳の大人だってことも、この先の清香たちの未来を知っているってことも、全部『おせっかい』の言い訳に使わせてくれよ。
それくらい、いいだろう?
「もし、うまくいかなかったらさ……」
環菜は正面を向いた。
「全部、ノブモトのせいにしちゃおう!」
カラッと乾いた笑顔を見せた。
「……」
璃子と飯田が、一瞬目を見開いた。
「――それいい!」
続いて、そろって同意する。
3人はひとしきり笑った。
「最初から、こうすればよかったんだ」
落ち着いてきたところで、環菜が言った。
「ためらってないで……そうすれば、余計なこと悩まなくてすんだのに」
「まあ、そりゃ人間関係なんて、難しいもんだから」
飯田がまあまあ、と手を振る。
「仕方ないっちゃ、仕方ないよね」
と璃子が言った。
「環菜は自分で言ったこと、口に出した瞬間忘れていくから」
「それは……結構、そういうもんじゃない?」
環菜は2人を見た。
「自分で言ったこと、忘れたりとか……え、そうでもない? 人に言われて思い出したりとか、――そんなことない。――あ、私だけ。ああ、そうですか、それはどうも失礼しました」
環菜は1人、背を丸めた。
「――環菜が抜けてるかどうかは、今はどうでもいいからさ」
と璃子が言った。
環菜の顔がしょぼーん、となった……。
「じゃあ、どうしたらいいかって話だよね」
「正直、小崎はどうすることもできないと思うんだけど、やっぱり」
と飯田が言った。
「清香が話したがらないんだもんね」
環菜が真面目な顔で言った。先ほどまでの自分をなかったことにしようとしている。
「まずは、清香に意地をはるのをやめてもらうところだ」
「そして、そこが1番難しい」
と璃子が言った。
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