10月1週目

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「……環菜?」  急に黙りこくってしまった環菜に、璃子が声をかけた。  環菜は、天井を仰いだ。 ――でもさ、ノブモト。  あんたのわけわかんない実験とやらに、私ら親切に付き合ってやってんだ。  中身は28歳の大人だってことも、この先の清香たちの未来を知っているってことも、全部『おせっかい』の言い訳に使わせてくれよ。  それくらい、いいだろう? 「もし、うまくいかなかったらさ……」  環菜は正面を向いた。 「全部、ノブモトのせいにしちゃおう!」  カラッと乾いた笑顔を見せた。 「……」  璃子と飯田が、一瞬目を見開いた。 「――それいい!」  続いて、そろって同意する。  3人はひとしきり笑った。 「最初から、こうすればよかったんだ」  落ち着いてきたところで、環菜が言った。 「ためらってないで……そうすれば、余計なこと悩まなくてすんだのに」 「まあ、そりゃ人間関係なんて、難しいもんだから」  飯田がまあまあ、と手を振る。 「仕方ないっちゃ、仕方ないよね」 と璃子が言った。 「環菜は自分で言ったこと、口に出した瞬間忘れていくから」 「それは……結構、そういうもんじゃない?」  環菜は2人を見た。 「自分で言ったこと、忘れたりとか……え、そうでもない? 人に言われて思い出したりとか、――そんなことない。――あ、私だけ。ああ、そうですか、それはどうも失礼しました」  環菜は1人、背を丸めた。 「――環菜が抜けてるかどうかは、今はどうでもいいからさ」 と璃子が言った。  環菜の顔がしょぼーん、となった……。 「じゃあ、どうしたらいいかって話だよね」 「正直、小崎はどうすることもできないと思うんだけど、やっぱり」 と飯田が言った。 「清香が話したがらないんだもんね」  環菜が真面目な顔で言った。先ほどまでの自分をなかったことにしようとしている。 「まずは、清香に意地をはるのをやめてもらうところだ」 「そして、そこが1番難しい」 と璃子が言った。
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