10月1週目

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「どうして小崎はそんなのが、好きなのかなあ」  飯田が腕組みをする。 「そう言ってやるな」  環菜が背中をたたいた。 「そんなの人によるじゃないか」 「そうだけどさ」 「大概、小崎だって意地っ張りだよ。似たようなもんだ」 「それもそうだけど」 「まあ、まだ18歳だと思えば、どっちも可愛いもんじゃない」 と璃子が言った。 「そうだよねえ、まだ高校生だもんねえ」 「ピュアだよ、みんな」  うんうん、と3人うなずきあう。 「……」 「――じゃなくて!」  環菜が両手をあげた。 「また話が脱線する! 今は高校生が可愛いとか関係ないから!」 「あんただって乗ってきたじゃない!」 と璃子が言い返す。 「声大きいぞ!」 と飯田がたしなめる。 「高校で、高校生が高校生を可愛いとか、そんな発言おかしいだろ!」 「何よ、高校生が高校生を可愛いって言うことの、何がおかしいのさ!」 「あんただって、脱線した話、広げてるじゃないの!」  3人とも息が上がってしまった。 「……歳だな」 と環菜が言った。 「やめろ」 「体は若いもん」 「こういうのって、やっぱり気持ちの問題のような気がするな」  環菜は璃子の隣で、壁に背を預けた。 「何か、疲れちゃったもん」 「頑張れ」 と璃子に励まされる。 「何かあったら、私がハリセンでひっぱたいてあげるから」 「わわ、忘れてた」  環菜は驚いて、壁から離れた。 「何それ」 と飯田が尋ねた。  環菜と璃子は、クニモトの素敵な贈り物について、説明した。 「……本当、わけわかんないな、あいつは」 「でしょ、でしょ?」  環菜は力を込めて言った。 「璃子に凶器与えるなんて、どうかしてるって!」 「それ、どういう意味よ」 「どういう意味かって聞かれれば、そういう意味よ」 「そうやってすぐごまかそうとする!」  璃子がハリセンを出した。
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