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「…金織くん。」
「ゆうちゃんおひさー!んじゃ、借りてくね!」
「え?」
怪我をしていない方の手を握られ、ズルズルと引き摺られていく。
ワーワーと皆騒がしくなったけれど、頭がついていかずされるがままに連れて行かれる。
「ね、怪我したって聞いたよ。大丈夫?」
「はい、全然平気ですよ。」
そっか、と振り返って安心したようにはにかむ金織くん。眩しい。
「一体どこへ向かっているのですか?」
「ん?ゴール。」
「…はい?」
「ありゃ、もしかしてわかってない?」
ドキリ、と嫌な予感がした。
金織くんの顔が物語ってるよ。ニマニマと悪い顔してる。
「借り物競走、最後の一列。大トリだね。」
それを聞いた瞬間からどんどん走る足が重くなっていく。
まだ『料理長』というお題が入っていたなんて。
同じお題を何枚も入れたらダメだろ、倉間くん。いや、まず勝手に俺をお題としないでほしかった。
「ほんと俺ってばラッキーボーイじゃない?クラスの子が出れなくなっちゃって仕方なく俺が出たんだけど正解だった。」
「アンラッキーボーイの間違いでは…」
「んー?ふふ、そんなことないよ。一番引きたかったお題なの。」
クイッと繋がれた手を引かれ、俺に見せるように上げる。いつの間にか恋人繋ぎになっていたのには気がつかなかった。
「せめてその繋ぎ方はやめましょうか。」
「つれないなぁ、もう。」
そうしないと殺される。
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