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金織くんとグラウンドに戻るとあっちこっちから悲鳴なようなものが聞こえ、連なるように声が重なって雄叫びみたいな声がグラウンドに響いた。
皆めちゃくちゃ怒ってるじゃん。怖い。
「俺ゆうちゃんのそういうところも好きだよー。」
「何の話でしょうか。」
教えなーい、といたずらっ子のような笑みで俺の手を引っ張った。更に周りがうるさくなって耳が痛い。
「ゆうちゃんはさ、俺がどんなお題引いたか知りたくない?」
「…え?」
どんなお題って、俺がわざわざ選ばれるっていうんだから一つしかないと思うんだけれど。
「え!まさか『料理長』とかそんな簡単なお題だと思ってたの?!」
思っていたことを当てられてしまった。
素直にはい、と頷くと、そっかぁと苦笑いされた。
「あの子もそんな簡単なお題じゃなかったと思うよ。」
庭羽野くんのことだろうか。
すぐ後ろには他のお題を持った学生さんがいるというのに呑気に話し続ける金織くん。
喋りながら走ってるけれど、それでも走るスピードは速い。
余裕な表情もさすが生徒会だなと思った。
俺ははやくゴールして逃げたい。
「特別に教えてあげる。」
「っわ…!」
1番にゴールテープを切り、ピストルの音が鳴った瞬間。
繋いでいた手を引っ張られ、傾いた俺の体を支えながら耳元でボソボソと囁く。それに気を取られている間に頬に柔らかな感触と、ちゅ、と可愛らしい音。
「は…?」
近距離でニシシ、と笑う金織くん。一層うるさくなるグラウンド。
俺の声は掻き消されてしまった。
「この前の仕返し。」
…え、何の?
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