唐揚げ

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何を言い出すかと思えば、そんな事かと思う反面。なぜそんなことを聞くんだろうと疑問が生まれ、ジッと先輩の目を見つめた。 先輩のことだから何か裏があるのではないかと考えているうちに長い間見ていたらしい。 「その顔はダメだ。」 「痛っ…」 容赦ないデコピンの痛さに悶え、ヒリヒリするところを擦る。 頭割れたかと思った。絶対血出てる。出てない。 「いきなり何するんですか。」 「理事長の匂い纏わせながらアホ面してっから腹が立った。」 「…え?」 「香水の匂いがお前からすんだよ。」 腕を鼻に寄せて嗅ぐ。ふわっと香るのは俺のお気に入りの柔軟剤の匂いで、全然理事長の匂いなんて全くもってしない。 「ベタベタ触って必要以上に引っ付かれたんじゃねーの。」 「…あー、」 先輩に言われてぽつぽつと思い出す理事長とのあれやこれ。とても疲れてる様子だったからだいぶスキンシップ激しめだったな、とうんうん頷いた。 そんなことより木戸崎先輩の嗅覚の異常さに驚きを通り越して感動を覚えた。 人間の嗅覚ではない。犬並みだと思う。すごい。 「勝手にマーキングされてんじゃねーよバカ悠介。」 頭や顔、首、服を火が出そうなほど擦られ続け、気力さえ吸い取られた気分になった。
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