唐揚げ

9/15
前へ
/146ページ
次へ
満足げな先輩を横目になんとか気力を取り戻して与えられた雑務をこなしていた。 消耗品の在庫を確認したり、代わりにハンコを押したりと簡単な仕事を与えてくれるところは流石だと思う。 俺も自分で両利きでよかったと過去に頑張って慣らしていた自分を褒めた。 これ着とけ、と言われて渡された白衣も見慣れた頃だろう。先輩も同じ白衣を着ているのに、自分には似合わなくて少しショックだった。 「先輩、インスタントコーヒーのストック全然ないじゃないですか。」 「んあ?…最近補充したばっかりなんだがな。」 「そういえば今日、いつも以上におかわりしてましたね。」 先輩がパソコンの画面から目を離して、くわっと欠伸をした。腕を使って伸びをする先輩の体からバキバキと痛そうな音が鳴っていた。 「文章考えてっと無意識のうちに飲んじまうんだよ。」 「…何の文章ですか?」 「保健だより。」 「えっ。」 保健だよりって、長期休み前に必ず渡されるけどあまり目を通さないあのお便り?手洗いうがいきちんとしよう、ってうさぎさんやくまさんがうがいしているイラストがよく載っているあの保健だより? 「…先輩が?」 意外すぎて、似合わなすぎて、笑いが込み上げてきた。思わず吹き出すと、うるさいと怒られてしまった。 「はー…笑い疲れた…厨房から持ってきますね。」 「…早くしろよ。」 ぜひ完成したら見てみたい。
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3347人が本棚に入れています
本棚に追加