唐揚げ

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「うっ…うわぁぁぁあんっ!」 「え、え、ちょっ…」 「料理長ぉ…やっと戻ってきたっスー!!」 コックコートに着替えて厨房に顔を出すなりこっちを振り向いた土佐谷くんが両手が泡だらけのまま俺の方に走って来た。 「ストップ、土佐谷くん。」 「はいっス!!」 さすがの反射神経だ。俺が伸ばした手の平ギリギリで止まった。ふにゃふにゃと笑う土佐谷くんはいつもより少し可愛らしい。 「うへへ…やっぱり料理長はコックコートが似合ってるっス。」 「そうかな?ありがとう。」 何が楽しいのか俺の顔をずっと見てる土佐谷くんに、手についた泡が落ちそうだよと言って慌てさせた。 俺がいなかった1週間はみんなで役割分担して厨房をまわしていたそうだ。何かが起こるわけでもなく、ミスもなく乗り切ってくれた。 すごい。明日お菓子を皆に配ろう。 「生徒会の人達からは注文なかったの?」 「それが料理長がいない間に1回もなかったっスよ!」 まぁ俺からしたらラッキーっスけどね!と鼻歌を歌いながら皿を棚にしまっていた。 だけど、なんか変だ。 部屋に来た金織くんは元気そうだったし、生徒会の方々はお弁当デビューでもしたのかな。それもまた気になる。 「転入生のおかげで書類に追われて生徒会が大変らしいっていう噂もあるくらいっスからねぇ。」 「なるほど。」 そんなことより今日は鳥が食べたい気分だ。夜は唐揚げを作ろう。
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