唐揚げ

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「お疲れ様っしたー…ってあれ、料理長帰んないんスか?」 「うん、ちょっとここで夜ご飯作ってから戻るよ。」 食堂の夜のピークも超え、後片付けも終わらせて皆がぞろぞろ出ていく中。 帽子とコックコートを脱ぎながら厨房を出ていこうとする土佐谷くんが何かをしようとしている俺に声をかけた。 何作るんスか!と尻尾をブンブン左右に振って聞いてくる。ただの幻覚だ。 「唐揚げだよ。」 「からあげ!」 わふわふと興奮気味になる土佐谷くん。やはり大型犬に見える。 「夜部屋に持っていこうか?」 「食べた…あっ!!…っううう〜!!」 ハッと何かを思い出したかのように動きが止まりし、すぐにしゅんと耳としっぽが垂れた。 「俺これからトレーニング室行く予定なんスよぉ…」 この学園にあるトレーニング室はどこのスポーツジムよりも大きく、機器も幅広く揃っている。しかも筋トレマシンは全部最新物。ヨガスペースもある。いつも体育会系の生徒が集まっている。 24時間開放されていて生徒はもちろん俺ら含めここの関係者も全員使っていいとなっているが、生徒と遭遇するのを避けるために夜の時間に使う大人が多い。 土佐谷くんの体が引き締まっているのは休みの日に体を動かしているだけでなく、週に何回かそこに通っているのもあるのだろう。体力がありすぎる。 「そっか。土佐谷くんは鍛えた後、必ずプロテインだもんね。」 「料理長の唐揚げもめちゃめちゃ食べたいんスけど…!でも…!!」 筋肉優先してあげて。
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