唐揚げ

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「…よし。」 気がつけば皿に山盛りの唐揚げ。完全に作りすぎたのは明らかだった。 唐揚げは出来たてが1番美味しい。 つまり時間との勝負なわけで、後片付けはできるだけ揚げる前に済ませる。揚げているときは目を離さず、無駄な脂を落とすのも忘れない。 極秘のタレを揉み込ませた鶏もも肉はやわらかくてジューシーに仕上がる。完璧だ。 外はカリカリ中はジュワーを極めた唐揚げは照明の光の角度でキラキラと輝いて見える。 「ん、美味そう。」 部屋に持って帰って食べるなんて唐揚げが冷めてしまう。そんなのはもったいないと、食堂の厨房近くのテーブルにタワーになった唐揚げを置いた。 ここで晩御飯を済ませて余った分をタッパーに入れて持ち帰るつもりだった。 ご飯、唐揚げ、サラダ、水。気分によってレモンやマヨネーズを用意する。今日はマヨネーズを小皿に出した。 コックコートも脱いで隣の椅子の背もたれにかけてやっと気がつく。 …箸がない。 どうやって食べろっていうんだと心の中でツッコミを入れて仕方なくもう一度厨房に戻った。こういううっかりは少しがっかりする。 往復をしている間ぐうぅと腹の虫が鳴っていた。今日もすごく忙しかったから腹が飯を欲している。はやく腹を満たすべく箸を手に持って唐揚げの元へと急いだ。 「え。」 「…あ。」
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