お肉

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ザアザア降る雨とジメジメした室内。 ここ最近ずっと雨が降り続いている。 「今日も雨っスかぁ。」 「外は生暖かいし、蒸されてるみたいだね。」 お互いに閉じた傘を片手に従業員用の通路を歩く。 足首辺りまである黒いレインコートも着て、外に出る気満々の服装だ。 テレビの天気予報では今日の雨が過ぎ去ったら本格的な夏がやってくると言っていた。 本当にそう思えるほど地面を打ちつける雨の量も今年一番といえるくらい多く、まだ昼前なのに外は真っ暗だった。 「食材運ぶの手伝ってくれてありがとう。」 「そんなの当然っスよ!むしろ一人で行こうとしてて焦ったんスから…」 一人で運べる量だからいつもみたいに行ってくるね、と伝えただけなんだけど、全力でダメだと言われて一緒に行くことになった。 この大雨を見て心配してくれたようだ。 本当に心配性だな、土佐谷くんは。 「でも、こうしてゆっくり歩くのもいいっスね。」 雨だから遠回りをして屋根のある通路を歩こうと俺の手を引いた土佐谷くんはなんだか楽しそうに笑っていた。 生徒は当然ながら、従業員も忙しいのか一人も出歩いている者がいない。周りは静かで雨の音と俺たちの話す声だけが響く。 俺は土佐谷くんの顔をまじまじと見つめた。 「な、なんスか?俺の顔になんかついて…」 今も"嬉しい"が顔全面に出てる。 外とは対象的に土佐谷くんの笑顔は晴れ晴れだ。こっちも笑顔になってしまう。 2人だけの世界のようだった。 土佐谷くんのおかげで天気に負けないほのぼのとした雰囲気。 「土佐谷くんって太陽みたいだね。」 「んえっ?!」 俺も雨は嫌いではなかった。
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