お肉

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「西村さん!雨の中ありがとうございます。」 「おう、来たか!腐る前に持ってけ!」 若干サイズの合わないレインコートを着て、俺らが来る前に台車に食材を積み終えてくれていた。 ダンボールや木箱にビニールまで被せてあり、西村さんの優しさに両手を合わせて拝みたくなるくらいだった。 「チッ…うざってぇ雨だ。」 顔を顰めてレインコートのフードを脱ごうとしたのを慌てて自分の傘を傾けて西村さんの頭が濡れるのを防ぐ。 「あぁ?!料理長?!」 一応大きめの傘のはずだが大人2人、ましてや片方がマッチョと1つの傘に入るとどうしても肩がはみ出してしまう。狭い。 「…なんだよ。」 「西村さんが濡れると思いまして。風邪引きますよ。」 「俺が貧弱に見えんのかァ?」 西村さんが俺の肩に腕を回してグッと身を引き寄せる。傘の中の密度がもっと高くなった。 機嫌がいいのかニタニタという表現が一番ふさわしい笑い方に圧を感じて目を下に逸らす。 …レインコートが小さいことってあるんだな。 胸辺りのボタンが弾き飛びそうになってる。 ムキムキな西村さんにはフリーサイズという表記のものは小さくなるそうだ。 「そういえば購買の兄ちゃん見てねぇか?」 「え…今日は見ていないような気がしますね。」 「そうか。じゃあ代わりにこれも持って行ってくれ。」 「早く行きますよ料理長!!」 てんやわんや。
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