お肉

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西村さんに頼まれたもの。それはお昼に売るパンたち。よく見かける平らなプラスチックケースが3段、上は蓋がしてある。 「これら購買の方に持って行くから先に行っててね。」 「寄り道はダメっスからっ!」 この学園の購買は正面玄関を入ってすぐのところでパンや弁当、飲み物も売っている。昼の時間にだけ売って無くなり次第終了。 素晴らしいことにこの無駄に広い校舎にはコンビニという食品から日用品までも取り扱ってある便利な店も一階に備え付けられている。 なぜコンビニがあるにもかかわらず購買が大人気かと言うと、一度だけ自分も急遽必要になったタオルを買いにお邪魔したことがある。そこでようやく分かった。 1枚で10000円は誰が買うと。 最高級の肌触りは使うのを躊躇う。 菓子が1000円単位だったり、ミネラルウォーターは水道水飲んでいた方がマシだと思うほどだった。 彼らは小銭の存在を知っているのか。 お金持ち学校と言えど、特待生で入学してきた一般庶民も少なからずいるわけで。 昼に現れる正義の味方に縋るのも無理はない。購買だけは他の学校とは変わらないような値段だった。 あとは胃袋の底がない子や庶民の味にハマってる坊ちゃんも買いに来るそうだ。わかる。 購買の焼きそばパン、コロッケパン、カツサンド…ちょっと味が濃いのが美味しいんだよね。余ったあんぱんだって美味いに決まってる。 高校時代、友達が昼休みのチャイムと共に教室を飛び出して戦場へと向かっていく姿はかっこよかった。 弁当持参だった俺には決して縁のない戦いだと思っていたけど、その友達に引っ張られて放り込まれた時は三途の川が見えた。その時二度と行かないと誓った。
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