お肉

10/11
前へ
/146ページ
次へ
じゅわじゅわと焼ける音、鉄板から出る煙、食欲をそそられる黒胡椒のスパイシーな香り。 肉は元気になれる源。 「うわぁ!美味しそう…!」 やはりここで扱うステーキは高級牛だ。有名な和牛たちを贅沢に使えるなんて。 調理をする俺も楽しくて仕方ない。 まず、食堂の食材の予算が毎月余るくらいの金額なのだ。食材をケチる必要もなく、新鮮で美味しいものが仕入れることができる。理事長様様である。 「いただきますっ!」 病み上がりなのにどんどん口の中に入っていく肉たち。もはや肉が吸い込まれていってる。 「ゆっくり食べてくださいね。」 「はいっ、ありがとうございます…すごく美味しいです…!」 よっぽどお腹が減っていたんだな。 喉に詰まらないようにコップに水を注ぎテーブルに置く。すぐ手に取って飲んでた。 肘をついて眺めていると、顔をあげた東条くんの前髪がはらりと横に流れる。 目が合った瞬間、大きな口を開けて肉を向かい入れる体勢で停止した。 数秒見つめ合って、今度はゆっくりと咀嚼を始めた東条くん。 「…す、すみません、最近時間がなくて…食事を疎かにしてしまいまして…」 だから急に走ったらぶっ倒れました…、と最後の方は聞き取れないくらい小さな声になっていった。 「それは説教ですね。」 「すすす、すみませっんん!」
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3347人が本棚に入れています
本棚に追加