アルコール

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平和だ。 いつも通り仕事を終えた金曜日、更衣室で着替えていた。 俺は今内心ルンルンなのだ。 なんて言ったって今週の土日は何も仕事が入っていない、本当の二連休だから…! 土曜日のバスケの部活がテスト期間で休みらしい。それはちょっと悲しい。 けれど。本当に、久々の、奇跡の二連休だ。たまにはほしくなる二連休。 今日もみんなを定時で帰して、俺もほぼ残業なしで終わらせてやった。 ふらっと遠出してグルメ旅にでも行こうかな、と考えながら、途中で入ってきた栄さんにお疲れ様ですと頭を軽く下げた。 「萩谷さん。飲みに行きませんか。」 そしてげっそりした栄さんからの提案だった。 「車取りに行くので栄さんここで待っていてください。」 「はい、わかりました。」 一緒に外に出て門の前で別れ、急いで車を取りに行った。 学園(ここ)を出て下まで降りてもまだまだ賑わっている時間帯だ。 栄さんに飲みに誘われるなんて。もしかしたら何かあったのかもしれない。 「お待たせしました、どうぞ。」 「よ、よろしくお願いします…」 恐る恐る助手席の扉を開けて乗り込んだ栄さん。 エアコンが寒くないかを聞くと、大丈夫です、と少し緊張気味に答えてくれた。 外は夜でも暑くて風がない。もう夏になっていた。
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