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時間が経つにつれて栄さんは悲しみから徐々に怒りへと変わり、栄さんらしくない言葉で愚痴を溢していた。
「ほんっとあの人は次から次へと問題を起こして…被害者の気持ちになってほしいですよっ。毎回大変なんですから私たちだって。」
そんな日本酒を一気に飲むなんてやめた方がいいですよ、と言おうとしても本人はケロッとしてるから無駄な心配をしていたみたい。
酒に強いって羨ましい。
「萩谷さん、大丈夫ですか?」
「はい。まだ平気です。」
残り三分の一程の酒が入ってるジョッキを傾け、一気に飲む。カラリと氷が鳴った。
「でも頬が赤くなっていますよ…?」
栄さんの手が伸びてきて、俺の頬に手のひらを当てた。
「手、冷たくてきもちいいです。」
アルコールで火照った体には最高の冷たさだった。
前に冷え性だって言ってたけど、夏でも冷たいのかな。そうだとしたら体が温まるスープとか作ってあげたいな。
「萩谷さん…」
スラリとした長い指が頬を撫でた。瞼が自然と閉じて無意識に手に顔を擦り付けた。
冷たさを存分に味わえる。
確かに俺はいつもより酒を飲んでいた。
「…酔ってますね。」
「ん?」
先程まで平気そうだった栄さんも頬を赤くして口元を隠している。
やっと栄さんにも酔いが回ってきたかと嬉しくなった。
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