「内緒のゲーム」

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「あぁ。 ただし条件がある。」 「・・・条件?」 「ゲームに勝ったらの話だ。」 ・・・え?ゲーム? 「今からゲームをして、もしお前がそれに勝ったら・・・」 先輩が耳元で呟く。 「俺のこと   くすぐっていいぞ」 そう  あの時自分が頼んだこと それは 『先輩のこと・・・くすぐらせて下さい・・・!!』 だった。 当時は一瞬戸惑っていた先輩だったが、笑って即OKが出たのだ。 「にしても、なんであの時、俺のことをくすぐるなんて言ったんだ?」 「それは・・・」 言えない。 『自分と同じ感覚を味わってもらって、自分が傷ついていないことを分かってもらいたいから』だなんて・・・ 『俺・・・ひどいことしていないか?』 いつも笑っている先輩があの時見せた切なげな顔。 ひどいことだなんて・・・ そんな顔見たら、こっちまで胸が締め付けられる気がする・・・ 「受け手の感覚を、より理解していただくためです。」 「受け手?」 「くすぐられる側のことです。小説を書く際、攻め手の気持ちと共に、受け手の気持ちも頭に入れながら書いていると思います。樹の色気ある描写や台詞と、裕翔のなんとも言えない感覚やつぶやきが合わさることで、あの小説はより光ると思うんです!その感覚を、この機会に味わってほしいのです!」 それっぽいことを口走り、先輩の納得を得ようとする。 ただ・・・作者である先輩に「うっとおしい」と思われたらどうしようという不安はあった。 「お前ってやっぱりこのことになると熱心になるな。」 「すみません・・・」 「いや何で謝るのよ(笑)」 「僕なんかがこんな偉そうなこと言って・・・」 「和人っ。」 ずいっと先輩が顔を寄せてくる。 名前で呼ばれることにまだ慣れないから、驚いたのももちろんだし、先輩の顔が急にドアップになったことも、ドキッとした。 先輩の目線が貫いてくる。 「自分を悪く言い過ぎるの禁止っ!」 「は、はいっ。」 ・・・そういう先輩だって、自分自身のこと悪く言い過ぎる時あるじゃん・・・。 「それに」 先輩は返事を聞いて離れる。 「・・・俺、あんまくすぐられたことねーから・・・ちょっと気になるかも・・・」 その頬は、少し赤らんでいる。 笑ったり  落ち込んだり  恥ずかしがったり・・・ 本当にいろいろな表情をする先輩。 どれが一番だなんて順位をつけられないぐらい・・・ ・・・って、何考えてるんだ!!自分は!
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