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「腹減ったぁ」
教平は火照った身体を冷ますように、季節外れのティーシャツで下校。帰り道にあるパン屋で菓子パンでも買おうかと思案中。久しぶりの部活で、身体に心地いい疲労感を感じながら。
「ん?」
ポストの前に紙ヒコーキが落ちているのを見つけた。なんでこんなところに紙ヒコーキ? そう思いながら拾い上げる。何気なくそれを開いた瞬間、「はぁ!?」と声を漏らした。
『教平のことが大好きッ!』
そう書かれた紙ヒコーキ。誰が書いたものなのか分からない。教平ってのが自分じゃなく、別の誰かかもしれない。ただ、悪くない。むしろ、気分はいい。どこかで誰かが自分に行為を寄せているかもしれないと思うと、少しロマンチックな気分に浸れたからだ。
教平は空腹も忘れて空を仰いだ。これを書いたのが、伊織だったらいいのになぁと思いながら。
冬を告げる冷たい風を肌に感じ、カバンからジャケットを取り出し羽織る。さっきまで紙ヒコーキだったラブレターをそっと折りたたみ、ポケットにしまう。
「やっぱ腹減ったぁ」
パン屋を目指してゆっくりと走り出す。すれ違う救急車とパトカーが鳴らすサイレンの音すら、気にも留めずに。
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