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「お、おいっ! なんだ、こりゃっ?!」
「て、鉄の塊……、か? こいつ、空を飛んで来やがったよな?」
「は、はひっ?! 建物よりデカくねえっすか??!」
唐突に見たことも無い物体が降り立ったことで海賊たちは口々にたじろぎ、その正体不明な物体――“紫電”から距離を取るように後退る。
埠頭に居合わせる民衆もザワザワと落ち着きがないのだが――。こちらの衆目は、首都ユズリハへ“紫電”が初めて飛翔したのを目撃していたのだろう。『正体不明な物体』ではあるものの、それが城へ降り立ったのを目にしているため、恐慌の様子では無い。どちらかといえば稀有を現わす眼差しだ。
そうした外の反応に黒い瞳が優越に細められ、「ふふん」と鼻に抜く一笑を洩らしたのは、誰も知る由がない。
「どうよ、このカットインの入りそうな登場。女の子のピンチに魔導機兵で割って入る展開。上空から助けに入るのが、胸熱で滾るわよねえ」
上機嫌にくつくつと喉を鳴らす昶。反目に亜耶は、「そういう理由で急降下の指示をされたのか」と内心で呆れつつ、深いため息をついた。
「昶、やりすぎないように」
ただでさえ、船の多い埠頭に“紫電”で近づかないよう、ヒロに言われている。挙句の果てに、このように目立ったことを仕出かしているのだ。
魔動機兵にまつわる事柄で異世界を賑わすわけにはいかないと、亜耶が苦言していく――のだが。
「わかってるわよ。ちょーっと脅かしてお灸を据えてやるだけ」
返ってきたのは、軽い調子な昶の声だった。それは語尾に音符マークや星マークでもついているだろうという声音で、亜耶は本当にわかっているのかと言いたげな眼差しを向けてしまう。
金の瞳が肩とシート越しに後方の昶を冷ややかに見据えるが、昶は意に介すことなく操作を続けていく。と思えば、すうっと大きく息を吸い込んだ。
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