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異質な空間から引っ張られて吐き出されるように、出口だと思われる光の先へ――。
暗い場所から明るい場所へと追いやられ、目が眩む。光から咄嗟に庇って瞑った目を薄く開き、黒と金の二対の瞳が映したのは――、三つの目立つ大陸。その真中にある大地に聳えるのは、青々とした樹海に囲まれた一本の大樹。そして、細々と点在する小さな島々に――、青い空と碧い海だった。
今まで見たことも無い風景に、昶も亜耶もギョッとした表情を浮かす。
「うわっ! なになにっ?! 今度は何なのっ!!」
あまりにも唐突過ぎる事態に、昶の口から意図せずに焦りの声が溢れ出した。
暗闇の――、“時空の穴”だと思われる場所で少女が両腕を広げた途端に、闇が晴れて“紫電”の機体が光に引き寄せられた。
何も対処ができずに引力に誘われるまま異空間の外に出れば、目に映ったのは自分たちの知るものではない異なる世界。
これに驚くなと言う方が野暮だという出来事に見舞われたのだ。
「昶っ、制御が利きませんっ!!」
「ええええええ?!」
不意に聞こえた亜耶の焦りを帯びた声に、昶は再三の吃驚を声に出して顕す。
思わず複座の前方を見やれば、亜耶は右往左往とでもいうように装置の調整に動く。亜耶がそうそうと冗談を口にしないのを分かってはいるが、悪い冗談では無いのが明確。
「亜耶、落ち着いて。どういうことなの?!」
「“紫電”に纏わりついた魔力が異質過ぎて、魔法動力炉と魔力増幅装置が上手く作動していません。なんなんですか、この現象は!!」
「あ、あたしが知るはず無いじゃない! ――って、制御できないってことは、このまま……」
「墜落しますっ!」
まるで亜耶の非情な宣言を待っていたかのように、水平飛行をしていた“紫電”の機体がぐらりと傾いだ。と思えば、重力に従って急激に下方に引かれていく。
「う、嘘でしょーーーーーーーっ?!?!」
周囲モニターいっぱいに映し出される青と碧――。
徐々に碧い海原が近づいて来る事実に、ふたりの少女の悲鳴が尾を引いた。
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