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鋭さを帯びた紺碧の瞳が、海賊ふたりが向けてくる二刃の軌道を見極める。獰猛な笑みに口端が歪み、両の腕が勢いついて展開した。
右手に把持するカトラスがひとりの剣を弾き飛ばし、間髪入れずに腹部を蹴り飛ばす。
併せて向かってきていたもう一人のカトラスは、左手に握るソードブレイカーが捉えた。
蹴り上げていた足が地に着くと、僅かに腰を落として左手首をグッと下方へ捻る。すると、ソードブレイカーに抑えられた細身のカトラスは、ギリギリと金属同士の擦れる耳障りな音を立ててたわみ、一点へ無理な力がかかったことで剣身がへし折れた。
「げっ?!」
思わぬ武器破壊を受けた海賊が狼狽を声に乗せ、押し込みの接点が抜けたことで前のめりによろけていく。
ヒロの胸に飛び込むという一歩手前で蹈鞴を踏んで留まり、はたと視線を上目にする――と、眼光炯々な紺碧が映った、のも束の間。
「生憎だが――。僕には野郎を胸に抱くような道楽は無いっ!!」
心底の気色悪さをかんばせに宿したヒロが吠え――。次に海賊の上目遣いが映したのは、ヒロが右手首を返し、カトラスの柄頭を振り下ろす動きだった。
立ちどころに海賊のこめかみで鈍い音が響き、呻きを洩らして崩れ落ちる。
完全に昏倒した海賊へ紺碧の瞳が冷ややかな一瞥を送り、二の足を踏みながらも果敢に攻めてくる残りの海賊へ向く。
ヒロは怒りを顕わにしながらも口元を楽しげに歪ませ、海賊たちの武器を狙い澄まして足を踏み込んだ。
「ふぅん。なんだかんだ言って、やっぱり海賊には優しいわよね。――でも、まあ。ここは衆目も多いから、判断としては正解なのかしら」
豪胆なヒロの立ち回りをちらりと見て、花冠の少女は湯上り用の巾布で海賊を叩き倒しながら独り言ちる。
中央広場にある目は女性や子供のものが多い。さような場所で無暗に血を流すことに、ヒロとしては抵抗があるのだろう。
賊害の揶揄を口にしながらも、本気で斬り返さずに抵抗する力を奪っているだけ。背を向けて逃走する海賊のことは、あえて見逃しているようだ。
「愛する祖国や愛する人に、本気の牙を剥けば容赦はしない。でも、昔のままの自由な在り方な海賊行為には、大きな害がなければ寛容。ただし、女性が被害を受けると凄く怒っちゃう。うんうん、ヒロらしいわね」
ヒロの視線は海賊の動向を鋭く睨みながら、花冠の少女の周囲をも気にかけている。
恐らく、花冠の少女に海賊が凶刃を向けようものなら、ヒロは海賊衆を強引に叩きのめしてでも割り込みに来るはず。
花冠の少女の予想は、ヒロの性格を完全に理解してのもの。
だけれど解せないのは、すぐさま自分の近くに駆け寄ってこないこと――。
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