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エピローグ(6)
「今でも信じられない」
愛可が、うつむいたまま、ぽつりとつぶやいた。
「孝二郎様が、みんなを・・・私の両親も、ヒイ爺も、それに、旦那様や、奥様、真純さんのことも、みんな殺したなんて」
「それも、自分は手を汚さずにそうしたんですからね。卑怯な人です」
「でも、一つ救いなのは」
育生の言葉に、愛可と窪井は、うつむいていた顔を持ち上げた。
育生は、二人の顔は見ず、どこか遠くのほうに視線を向けた。
「遥が、このことを知らずに済んだことだ。まさか、自分が慕っていた叔父に実は命を狙われていて、しかも、婚約者の命まで奪われたんだと知ったら、遥がどうなっていたか。俺には、想像がつかん。想像したくもない」
愛可も、窪井も、なにも言わなかった。愛可は、寝ている赤ん坊を抱いている腕に力をこめた。窪井は、左手をコートのポケットから出し、鳥肌が立っている首の後ろをごしごしとこすった。
「あれ、窪井、お前」
その時、育生がそれに目を留めた。
「結婚したのか?」
「え? ああ、これですか?」
窪井は、ほっそりとした左手の指を見下ろした。その薬指に、銀色のリングがはまっている。
「いや、結婚はまだです」
「じゃあ、これから? お式の予定はいつなの?」
愛可が、それまでの空気を振り払うような、はしゃいだ声を出した。
「うーん、どうでしょう。なんにしろ、もっと落ち着いてからでないと」
「どういう意味だ?」
「彼女、私の子供を孕んでいるので」
育生と愛可は、唖然として窪井を見つめた。
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