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エピローグ(7)
窪井は、照れ臭そうに笑った。
「三年くらい前ですかね。商店街主催の合コンに参加して、知り合ったんです。子供ができたと聞いたのは、つい二ヶ月ほど前です。今、妊娠五ヶ月で、来年の春に産まれる予定です。ですから、籍を入れるのはいいとしても、式は、出産してから落ち着いてやったほうがいいかと」
「へえー」
育生と愛可は、声を揃えて感心したように肯いた。
「なんですか?」
「いや、なんていうか、驚いたんだ」
「そうそう。窪井さん、そういう艶っぽい話に縁がないというか、興味がなさそうだったから」
「そんなことないですよ。私だって、生身の男です。それに、もう三十路を超えていますしね。身を固めてもいい年なんです」
窪井は、ふんと鼻を鳴らした。彼女と付き合いだしてから、耳が見える長さに切り揃えている茶色い髪を、無意味に手でかき混ぜる。
「どうりで、随分顔が丸くなったと思ったぞ。栄養状態に改善が見られたんだな」
育生が冷やかした。窪井は、まぶたを半分おろして口をとがらせたが、それだけでなにも言わなかった。
それから、ふと思いついた顔になった。
「そういえば、そちらは? 私のことばかり話題にのぼってしまいましたが、あなたがたは、あれから変わりなく?」
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