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プロローグ
私がこうして筆を執ったのは、あるひとへの想いが募り、彼の人が夢にまで現れるようになったからでございます。
忽然と私の前から消えてしまったあのひと。夫も旅立った今、おそらく彼を覚えているのは、私だけでしょう。そう思い、あのひと――一真さんのことを書き残しておこうと決めました。一真さんは確かに私の横で喋り、生きていた。ただそれだけが伝わればと、拙い文字と文章を書き連ねています。
ああ、これからこの手記を読む人は、どう思われるのでしょうか。恥ずかしいやら、恐ろしいやら。
でも、伝えたいのです。あのひとが時間の積み重ねに埋もれていくことは、許せないのです。
だから、これを開いたアナタ。どうかこの想いを、受け取ってください。そしてその頭の片隅にでも、留めていただければ幸いです。私と、私の愛しい人達の日々が、鮮やかにそこに在ったことを――。
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