シグナル

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──ハロー、ハロー。  一つ、興味深いことがあった。現在私が居る場所から、推定100光年程離れた場所から、微弱な電波を受信したのだ。微弱だがそれは、天体が自然現象によって発する電波とはまるで異なるように感じられた。波長が一定で、規則性があり、人工的な要素が見出されたのだ。知的な生命体による信号である可能性も充分にある。  私は、この電波が発せられたとみられる座標に向かって、歩みを進めることに決めた。  ──ハロー、ハロー。  座標を目指して、20年が経過。例の電波は、途絶えることなく送られている。それも、次第に大きく強くなっている。 順調に近付いているのだ。正しい方向に進めている。  最早私は、この電波が生命体による信号であることを確信していた。初めて、自分以外の存在をこの宇宙に感じられた。信号の送り手が、一個体か複数体か、どのような生物なのかは分からないが、私はその存在を便宜上、「彼」と称することにした。 私からも、「彼」が受信することを想定し、電波信号を送りながら、さらにその座標へと近付いていく。
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