真夜中の迷路

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真夜中の迷路

 数多く抱えるトラウマの原因のほとんどが、怪談話やホラー映画からきている私。『花子さん』の学校のトイレ、『お菊さん』や『貞子』の井戸。『貞子』の場合、テレビやビデオテープにも、一時期異常に怯えていたこともあったっけ。  特に、洋画ホラーにまつわるトラウマは、なんせ映画オタクなので数多くあげることができる。霧の濃い日には『ミスト』や『ザ・フォッグ』を思い出して震え、緑豊かなキャンプ場では『ジェイソン』はもちろん、『死霊のはらわた』『キャビン・フィーバー』『バーニング』などなど、山ほどあるキャンプ場を舞台にした映画を思い出して夜も眠れない。  そんな私が夫の海外転勤で、アメリカに住むことになったからさぁ大変。何しろ街の至る所に、ホラー映画で見たあんなこんなの光景が溢れているのだから。  巨大ショッピングモールに行けば『ゾンビ』だ! と、ハイウェイで後ろから大型トレーラーが走ってきたら『激突』だ! と、ご近所さんがチェンソーで庭木の手入れをしていたなら『悪魔のいけにえ』だ! と、毎日がホラー漬け。  息子が黄色いスクールバスで登校する姿を見送る際には、『ヒューマン・キャッチャー』を思い出し、「どうかあのバスがモンスターに襲われませんように」と祈る日々。思い返せば、あれはあれでなかなか刺激的で楽しい日々だった。  アメリカ中西部の、都心から離れた郊外に住んでいたので、少し車を走らせれば、広大な土地に広がる畑や牧場の景色を眺めることができた。  果てしなく広がるトウモロコシ畑。これもひとつのトラウマだった。ホラー小説の巨匠、スティーブン・キング原作の『トウモロコシ畑の子供たち』は何度も映像化されているし、『案山子男』シリーズ、先述の『ヒューマン・キャッチャー』にも、トウモロコシ畑は登場する。大人の身長すら遥かに超えて成長したトウモロコシの畑は、いったん迷い込んだら周囲の様子がまるで分からなくなるある種の異界だと私は考えている。  これは、そんなトウモロコシ畑で起きた不思議な出来事の話 ──
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