Sound 1-3

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 そうか。 つまり、先生のいうアマネという名の人物は、あの日僕がぶつかった女子の名前なのか。 ということは、面会の目的はろくに謝らなかった僕への糾弾? ……いいや、だったら「ちょっとしたお願い事」の類にはならない。  では、何が理由で会わなければならないのだろう。 「……僕が放課後にぶつかった人の名前が、アマネなんですね」確認目的も含めて言った。 「そうそう。 その子が能鷹くんに会いたいって言うの」 「会いたい目的って、糾弾……とかではないですよね」  恐る恐る訊くと、先生は目をぱちくりさせてから笑った。 「違う違う。 言ったでしょう、身構える必要は無いって」 「じゃあ何が目的で会いたいって言うんですか」 「そうねぇ、実際にその子から教えてもらった方が良いかしら。 今日の放課後にでも話してあげてくれない?」 「今日って急すぎませんか」 「天音さんにとっては、あまり時間が無い状況なの」  何だそれ。 件の少女は難病を抱えていて、余命残り僅かとでも言いたいのか。 とすれば尚更に、赤の他人も同然な僕に面会を求める意味が分からなかった。 「とにかく、会うだけ会ってあげて。 大丈夫、能鷹くんに損は無いよ。 寧ろ、有益かも」 「……はぁ」 「放課後、私が来るまでここで待機しててね。 反故にして帰っちゃ駄目だよ?」 「……分かり、ました」  僕が了承したのは、これ以上話を長引かせることが面倒だったからだ。 それに、先生を探しに他の生徒がに近寄って来るのも避けたい。 得策かは知らないが、仕方がなかった。
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