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「……あまり時間が無い状況って、そのことだったんだ」
そしてぽつりと、能鷹くんが呟いた。 僅かに窺えた表情が、安堵の色をしていたのは気のせいだろうか。
「……実は僕、入部するか否かを決めずに来てて」
「え、そうなの?」
思わずぽかんとしてしまう。 同時に、彼が入部勧誘の断りを告げるために来たとも考えられることに気付いた。 とすれば、私はなんて早とちりにべらべらと喋りすぎたのだ。 私は恥ずかしくなって顔を俯かせた。
「……因みに、放送部が生徒会に吸収されたらどうなるの」
「え、あ、そうだね……活動内容を決める権限が生徒会に委託されるから、放送部は生徒会の元請け人になるの。 そうなると、生徒会の指示無しに私は自由な活動が出来なくなるんだ」
「……それは、嫌なんだ?」
「嫌だよ」私は即答だった。 「だってそんなの、放送部の肩書きを持ってるだけじゃない。 それはもはや『放送部』じゃなくて、『生徒会の放送役員』だよ。 私はね『放送部』としての自分を大切にしたいの」
「……でも、どうするの。 半年後には生徒会に吸収されるわけだけど」
「だからこその君じゃないかっ!」
私は目を輝かせ、勢い良く席を立ち上がった。 能鷹くんはびくりと肩を震わせ、自分を指差して首を傾げる。
「さっき、全てが報われるかもしれないと言ったよね」
「……はぁ」
「私は来る最後の日まで、放送部としての活動を全うするんだ。 しかしそこに君の力も加えたいんだ。 何度も言うが君の声は例えようの無いほどに素晴らしい。 そんな君の声で放送を行えば、学校中の女子を虜に出来るだろう」
「……それがどう報われるのかが……」
「生徒会は勿論君の声を知ることになる。 同時に、生徒の反応も知ることになる。 仮にも大反響だったとしよう。生徒会が我々の活動に制限を設けた時、生徒は何て思うだろうか?」
能鷹くんは首を傾げたまま動かない。 ハシビロコウだなと思いつつ、私は話を続けた。
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