Sound 2-1

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「「生徒の生徒による生徒のための組織が、生徒の自由を奪うなどあってはならない!」……と思うはず。 これは生徒会の信頼が失墜することを意味してるの」 「そうかな」 「そうよ。 そうに決まってる。 だから生徒会は、事前に失墜の芽を抜いておく必要があるんだよ。 つまり『放送部を生徒会に吸収させる』事案が、白紙撤回になるかもしれないの」  捲し立てて話し終えた私はしかし、途端に申し訳なくなった。 なぜなら、彼はまだ入部すると言っていないのだから。 「……ごめんね。 これじゃあ、君に入部しろって言ってるもんだよね」  能鷹くんにとって、断りにくい状況を築いてしまった。 まるで、大衆の前で告白をしているようなもんだ。 大概、そういった環境での了解は後々破綻することが多い。 なぜなら、本人の意志を捻じ曲げているも同然なのだから。 捻ればやがて耐え切れなくなって千切れてしまうのだ。  仮にここで能鷹くんが了解してくれたとしても、やがて最後の日を迎える前に水泡に帰すのではないだろうか……。 あまつさえ私の話は、彼の声を恣に利用するように聞こえるだろう。 尚更に捻れの進む要因を作ってしまったのだ。  椅子に座り直した私がそんな邪推を広げていると、能鷹くんが居住まいを正した。 ように見えた。 見た目ではなく、内面に何かしらの変化が現れたような気がしたのだ。  そうして、彼が呟いたのは──。
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