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「──つまり、匿名希望?」
「……そうしてもらえると、助かるかな」
彼の入部が決まった後、私は早速放送部の活動内容を説明した。 その中で昼休みに放送を行う話になると、能鷹くんは「僕の名前は伏せて欲しい」と要望したのだ。
「……無理かな?」
「ううん、無理なんかじゃないよ。 というか、最初から放送部員は匿名みたいなもんだし。 ほら、能鷹くんだってこの声は校内放送で聞いたことあるよね?」
「……まあ、何回か」
「だけどこんな人間だってことは知らなかったでしょ。 即ち、自分で大っぴらにしなければずっと匿名なの」
私の場合、放送部の部長という肩書きが影響して友達と呼べる人には顔がバレているけれど。 まあ、全校生徒に知られているよりかはマシだ。
「それなら良かった」
「安心して。 因みに、私が他の子に能鷹くんの名前を出すことも無いから」
「……分かった」
これで能鷹くんは安心してくれたようだった。
私は腕のストレッチを行いながら、「よっしゃ」と気合を入れる。 能鷹くんは椅子に腰掛けたまま相変わらずな様子だけど、きっと内心では同じように思ってくれていることだろう。
「そんじゃ、明日から腰を入れて行きますか!」
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