Sound 2-2

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 アプリのホーム画面には、風景写真やイラスト等を用いたサムネイルがずらりと並んでおり、それらにはタイトルが付けられている。 【暇な人、しゅーごー】 【十四時まで話す。】 【ヒマすぎるから誰かかまって!】 【とりあえず歌う。】 「……何、これ」 「これはね、一般の人がラジオのパーソナリティになりきって配信を行うアプリなの!」 「……ここにいるの、全員一般人?」 「そうそう。 だから私でも配信できるの」  私がこのアプリを見つけたのは去年のこと。 何となく勉強のお供になるアプリはないかと探していたところ、たまたま発見したのだ。 それまで配信アプリに触れてこなかった私にとって、老若男女が配信を行なっている空間というのは新鮮だった。 「このアプリなら学校よりも匿名性は上がるし、何より、放送の練習にもなるよ! ね、一度配信してみるのはどうかな」 「……配信ってことは、会話しなきゃいけないんだよね」 「放送部と違うのはその点、かな」 「……僕、あんまり会話を広げるの得意じゃないんだけど」 「大丈夫、私がリスナーとして能鷹くんの所に行くからさ。 私なら、気遣いなんて必要無いでしょ」  私はそれから、彼に配信を行なってもらいたい一心で色々と説明を施した。 能鷹くんは快諾とはいかなくとも、「……少しだけなら」と了承してくれたのだった。 「じゃ、早速今日の夜やってみようか」 「……え、そんな急に?」 「善は急げって言うでしょ。 君の声を早く生かさないともったいないからさ!」  きっと私の瞳は宝石をちりばめたようにキラキラ輝いていたことだろう。
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