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「……意外とすること多いんだね」
「でしょう? 放送部って案外大変なんだよ」
とはいえ、大会に出るわけでもないのだから本格にやる必要はない。 この放送部はもうその域まで衰退してしまっているのだ。 少しだけ物悲しく思ってしまう。 が、こうやって感傷に浸っている暇は無い。
「まずは腹式呼吸を出来るようにしよっか」
椅子を再び立ち上がり能鷹くんにも立ってもらう。
無論私は教えのプロではないから自分の頭の中にあるノウハウだけで教えることになるけれど、基礎の土台はしっかりしているはずだ。
「難しい説明は特に無くてね」私は自分のお腹に手を当てる。 「吸うときにお腹が出ていて、吐くときにお腹が凹んでるのを意識すれば良いの」
「……ほう」能鷹くんも自分のお腹に手を当てた。
「それじゃあ、私の合図で吸ってみよう」
流行りのJポップが流れる放送室で、腹式呼吸の練習を行なっているのは何だか不思議な気分だ。
「……これ、本当に出来てるのかな」ふと、能鷹くんはお腹に手を当てたまま首を傾げた。
「私の言った通りにお腹は動いてる?」
「動いては、いるけど」
「なら大丈夫だよ。 自信持って!」
本当は能鷹くんのお腹に触れながらの指導が効率良いんだろうけど、それは馴れ馴れしいように思った。 第一、能鷹くんもお腹を触られるのは嫌だろう。
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