Sound 2-3

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「能鷹くん、いつも放課後は教室で何してるの?」 「……え?」  能鷹くんが、ぽかんと口を開ける。 何を言ってるんだコイツは、と思われているかもしれない。 ここで「やっぱり何でもない」と言ってもよかったが、そうすると余計に気不味くなるような気がした。 だから、私は話を続けた。 「いつもは、ほぼぴったり同じ時間に来るのが気になったの。 だから、何かしてるのかなぁって」 「……あ、えっと、いつもホームルームの終わりが遅いだけだよ」 「あっ、なるほ──ん?」  話の語尾を飲み込もうとして言葉を切った。  脳裏に浮かぶは、廊下で若山先生と会った時のことだ。  たしか先生は「たった今終わったところ」と言った。 それならば、あの時点で能鷹くんは解放の身となっているはずだ。 だからこそ私は「いつも放課後は何してるの?」と訊いたわけで──。  まさか嘘を吐いたのだろうか? 何のために? よもや放課後の隙間時間で、人目に付いてはならない怪しい物を作っているわけではあるまいな──? 「……どうしたの。 突然」 「ちょっと不思議なことがあってね」  私は、浮かべた考えを能鷹くんに話した。  本当なら気にしなくても良い問題だったのに、それがある種パンドラの箱を開けることになるのに、私は話してしまっていた。 「──というわけなのよ」 「……へぇ、なるほど」  話終えると、能鷹くんはどこか苦い表情を作った。  てっきり「考えすぎだよ」という意味を込めたのだと思ったけれど、次に返って来た言葉はあまりに予想外だった。
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