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その言葉と言葉を繋ぐ一本の太い芯が、私の胸にダイレクトに突き刺さった。
「……だから、次の放送は成功させる。 次じゃなくても、いつかはきっと」
「の、能鷹くん……」
能鷹くんは私に向けていた決意の眼差しを気恥ずかしそうに逸らした。
「……とは言っても、簡単なことじゃないよね。 本当に僕に出来るかどうか……」
「出来るよ」即答だった。 「これから練習を重ねれば必ず、絶対、何があっても能鷹くんは自分の世界を変えられるよ」
既に私の世界を変えてくれているだけの力を、能鷹くんは持っている。 それはつまり、自分の世界も変えられる力があると同義なのではないだろうか?
私は机に手をついて立ち上がり、さしずめ演説者のように語った。
「私、能鷹くんの世界が変わるように全力でサポートする! 放送のコツとか一切出し惜しみしないから、これから頑張って行こうね!」
「……うん。 頼もしいよ」
能鷹くんの表情がどこか柔らかなものになり、私は自分の胸がドキリと鳴るのを感じ取った。 これは、彼の声で頼もしいと言われたからなのだろうか? それとも──。
いいや、今はその理由を探る場合じゃない! この流れを維持している間に始めるのだ。
私はかぶりを振って、本日の部活開始を宣言した。
「じ、じゃあ、今日も放送部の活動始めていこっか!」
「……よろしく」
「うん!」
ひょっとしたら、ここが本当のスタート位置だったのかもしれない。
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