Sound 2-4

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 あの日から、私たちの活動は目に見えるように進歩していた。  これは断言できることなのだけれど、放送部は確実にを形成している。 まさにずっと私が望んでいた光景であり、高校に通うのは放送部のためと言っても過言では無かった。 つい先週まで他の部活に引き目を感じて、青春を溝川に捨てていると思っていたことが嘘みたいだった。  そんな数日を経て、能鷹くんの二回目の放送日がやってきた。 週明けの水曜日は、まるで能鷹くんの放送を祝うようにすこぶる晴れやかな天気であった。 「……今度こそ、大丈夫」  アナウンスブースのマイク前に座る能鷹くんがそう呟き、すっと胸を撫で下ろしていた。 私はその少し後ろ座り、何も言わずに頷く。 肩に手を置いて「大丈夫だよ」と言うのはさすがにハードルが高かった。 「……それじゃあ、始める」  能鷹くんは、そっとアナウンスボタンを押した。 校内には、これから放送がなされる旨の音が鳴っているだろう。 全校生徒──とはいかずとも、昼の放送を楽しみにしている人はいる。 大半は自分の好きな曲を聴けるかもしれないと期待しているからであるが、それでも興味を示してくれるのはありがたいことだ。 そんな生徒たちに、能鷹くんの声を届けるのだ。  カチリ、とマイクのスイッチが押された。  能鷹くんはすっと息を吸って、そして──。 「……これから、お昼の放送を、始めます」  校内に、全身が粟立つ程のイケボを響かせたのだ。
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