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「良かった! 本当に良かった!」
まだ放送は始まったばかりだと言うのに、私は惜しみない拍手を能鷹くんに送っていた。 もう、私の脳細胞が暴れまくって「拍手をしろ」と命令するのだから仕方ない。 すっかり手のひらが痛くなっているが、そんなの気にしなかった。
「……ありがとう。 いや、でも、まだ棒読みだったけどね」
「棒読みでも全然良いの。 能鷹くんの声がマイクに乗って皆んなの耳に入っただけでも、これは大成功なんだよ」
「……はあ」
「だからね、もっと自信を持って大丈夫!」
痛む手でサムズアップする。
「……まぁ、放送終了のアナウンスはもう少し読み方に意識してやってみるよ」
言って、能鷹くんは昼放送の原稿に視線を落として口を動かし始めた。 私はそんな彼の姿を眺めながら、およそ一ヶ月後に迫った学校最大のイベント──文化祭の光景を思い浮かべる。
普段の倍以上の人が行き来する文化祭であることから、その分能鷹くんの声を広く届けられるのだ。 生徒会をギャフンと言わせるには、文化祭こそ最高のステージ。
私は、これに賭けていた。
──ただ、この話はもう少し後にすべきだろう。
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